カナヘビの行動範囲 解説                     もどる

 ニホンカナヘビの行動範囲については、京都教育大学のグランドで調査した例があります(石原1969)。この研究では、帰家習性も調べたので、最初に捕獲したときは1カ所の放逐地点に放して、元の場所に戻るかを調べました。約半数が元の場所に戻り、放逐地点と元の捕獲場所が180 m離れていても戻った例もあったようです。戻る途中で新たなホームレンジ(日常的な生活範囲)に落ちついてしまったカナヘビもいたようです。どちらもいったん落ちつくと狭い範囲(12 m2以下)で行動したようです。私が卒業研究で茨城県の山地で調査した場合も半数以上が10 m内外の範囲で行動しました。どちらの場合も行動範囲が定まらない個体や大きく移動する個体が見られています。札幌の丘陵地で個体標識調査を行ったことがありますが、その場合も数十メートルの調査区画から出ない個体がほとんどでしたが、300 mぐらい離れた場所に移動した個体がいました。
 カナヘビは、隠れる場所となる草むら、餌となる昆虫やクモなど、産卵や冬眠ができる湿った場所といった条件があれば、狭い空き地などでも生活できます。一方で、なぜ放浪するような行動をとる個体がいるのか、あるとき突然長い距離を移動することがあるのかといったことはまだわかっていません。

引用文献

石原重厚 1969. カナヘビの帰家習性について.京都教育大学紀要Ser.B, 36:11-23.


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