野外の食性と飼育の餌

 カナヘビは、野外の自然状態では、多種多様な餌を食べています。野外での食性を調査した例では、地面にいるクモ類、バッタ類、チョウやガの幼虫、ウンカやヨコバイ、ガガンボなどの昆虫が比較的多く食べられています(Jackson and Telford 1975)。この例では、クモ類がほぼ半数、チョウやガの幼虫が4分の1、それに続いてバッタとヨコバイが多いとなっています。食性分析では、餌食の種類が報告されますが、実際に胃内容物を見てみると、消化しかかっているイモムシやバッタから出た植物の葉の断片が無数に散らばっていることがあります。カナヘビは、多様なクモ類や昆虫類などを食べているだけでなく、それに含まれている半消化の植物質からも栄養分を吸収している可能性があります。

 では、飼育しているカナヘビに与える餌はどのようなものがよいでしょうか。一般に入手できる餌としては、ミールワーム、フタホシコオロギ、ヨーロッパイエコオロギ、ペレット飼料(フトアゴヒゲトカゲ用やヒョウモントカゲモドキ用)といったものがあります。また、ショウジョウバエ(飛翔しないフライトレス)を増殖して与えることもあります。これらを使用する考え方としては、どの餌がよい餌かというよりは、いろいろな餌を与えるということがよいでしょう。その際、ミールワームやコオロギ類には青菜(有機小松菜など)や果物の残りをあらかじめ食べさせておいて使用するとよいでしょう(ガットコンディショニング)。また、与える直前にカルシウムなどのミネラル類やビタミン類を調製したパウダーをふりかけておきます(ダスティング)。ペレットは吸水させて、柔らかくしてから、カナヘビが食べられるサイズに切ってから与えます。植物質と動物質を含みますので、栄養バランスはよいですが、個体によっては、まったく食べません。

 ミールワームは微妙に動く餌を目で探索して見つける、コオロギ類は素早く動く餌にとびつく、ショウジョウバエは細かい餌を口先でパクパク食べる、ペレットは嗅覚で餌を判別するといったように、カナヘビの採食行動を刺激するように餌のメニューに変化を持たせるとよいでしょう。


大きなバッタを捕まえたアムールカナヘビ(対馬にて)

参考文献

Jackson, D. R. and S. R. Telford, Jr. 1975. Food habits and predatory role of the Japanese lacertid Takydromus tachydromoides. Copeia 1975:343-351.


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