ヒガシニホントカゲのコメント                     もどる

 本種は過去に、近畿以西に分布するニホントカゲ(Plestiodon japonicus)と同種と考えられていたが、分子系統解析により別種であることがわかり、2012年に新種記載された。タイプ産地は東京都池上。ニホントカゲとの形態的区別は鼻孔が開く鱗の後の鱗が前後に2分し、頭頂部のもっとも大きい鱗とその前の鱗が接するタイプが多いといった形質を組み合わせて判別するが、単独形質での明確な判別点はない(Okamoto and Hikida 2012)。
 分布域は北海道と本州の紀伊半島の中央あたりと琵琶湖を通るラインより東と周辺の島嶼で、オカダトカゲ(P. latiscutatus)が分布する伊豆半島と伊豆諸島を除く地域。国後島に分布するニホントカゲとされてきたものも本種と考えられているが、標本の分析は行われていない。ロシアの沿海地域にも点在的に分布する(Okamoto and Hikida 2012)。
 生態的特徴は、ニホントカゲ、オカダトカゲなどのトカゲ属の種と基本的に共通と考えられる。繁殖期の交尾の時期に、オスはメスをめぐって闘争を行い、頭部をかみ合って頭部の大きさを競うといったことが知られる。メスは卵を巣穴内で守って世話をするが、世話のない状態では孵化率が大きく低下することが知られる(長谷川1993)。孵化した幼体は2,3日巣内に留まるようだが、私の飼育観察例では留まった幼体は親に捕食された。あまり長居はせずに巣穴を脱出する必要があると思われる。

 北海道のブルーリストでは、未導入種で予防的に指定する種としてニホントカゲをあげている(北海道 2019)。西日本のニホントカゲを北海道に持ち込むと在来のヒガシニホントカゲとの交雑による遺伝子汚染が危惧される。前述したようにヒガシニホントカゲとニホントカゲの形態による判別は専門的な研究者でないとむずかしいので、とにかく持ち込まないことが重要である。

 

参考文献:
 Basarukin, A. M. 1983. Distribution of amphibians and reptiles in Sachalin State. Nauka, South-Sachalin. 29pp.(原文ロシア語)
 長谷川雅美 1993. 雄の攻撃性における地域差 オカダトカゲ、ニホントカゲ.動物たちの地球5(103 両生類・爬虫類7 カナヘビ・スナトカゲほか):196-199.
 北海道 2019. 北海道ブルーリスト改訂版【両生爬虫類】https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/alien/bluelist/bluelist_revision.html
 Okamoto, T. and T. Hikida 2012. A new cryptic species allied to Plestiodon japonicus (Peters, 1864) (Squamata: Scincidae) from eastern Japan, and diagnoses of the new species and two parapatric congeners based on morphology and DNA barcode. Zootaxa 3436:1-23.

(2020.8.16)
(2021.11.18) ブルーリストについて追加


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