北海道の爬虫類と両棲類                      日本のカナヘビ類にもどる

北海道に生息する爬虫類と両棲類を在来種を中心に紹介していきます。北海道の爬虫類・両棲類相と関連するその他の種類も写真で若干紹介します。爬虫類から順次載せていきます。学名等の説明はその他のコメントをご覧ください。引用した内容に関しては主な参考文献のみをあげています。竹中践

トカゲ類(爬虫綱Reptilia・有鱗目Squamata・トカゲ亜目Sauria

ニホンカナヘビ Takydromus tachydromoides (Schlegel, 1838)

カナヘビ科(Lacertidae)カナヘビ属(Takydromus)に属するトカゲ。分布などについては、「日本のカナヘビ類」のニホンカナヘビの「やや詳しい解説」を参照のこと。カナヘビ属は、東アジアに分布するカナヘビ類で、他のカナヘビ科やカナヘビ科以外のトカゲ類よりも体形が細長く、尾が非常に長い。中国語で草蜥と書くことにも表されるが、草のあいだを縫うように素早く動く。学名のTakydromusも速く動くという意味。南の種類ほど、より細身になるが、北海道のニホンカナヘビはニホンカナヘビの中では、あるいはカナヘビ属の中では、どちらかというとどっしりした体形で、尾の長さも体長(頭胴長)の2倍をやや超える程度で、どちらかというと短め。その他のコメント
 下写真の左はバスキングする成体、中央は幼体(尾が黒っぽい)、右は頭部(眼の虹彩のまわりはオレンジ色)。


コモチカナヘビ Zootoca vivipara (Lichtenstein, 1823)

 カナヘビ科(Lacertidae)コモチカナヘビ属(Zootoca)に属するトカゲ。分布や学名などについては、「日本のカナヘビ類」のコモチカナヘビの「やや詳しい解説」を参照のこと。コモチカナヘビは世界の有鱗目(ヘビ・トカゲ)の中でもっとも分布が広い種と考えられる。コモチカナヘビは、ヨーロッパの研究者による分子系統解析で6グループが判別されているが、北海道まで分布するグループは東ヨーロッパから北海道までもっとも分布が広い。ロシアからサハリンを経て北海道に分布を広げたのは、1万年前程度の地史的年代としては比較的新しいできごとと考えられている。北海道を含むグループは胎生で、親メスは一か月以上にわたって胎児を体内に保持しながら、バスキング(日光浴)による体内温度の調整による発生促進をする。道北の生息地で妊娠メスを見かけたら、行動を妨げないように見守ってほしい。
 下写真の左はバスキング中の妊娠メス、中央は産み落とされて出てきた直後の幼体、右はサハリンの海岸の地衣類の茂みにいたコモチカナヘビ。

ヒガシニホントカゲ Plestiodon finitimus Okamoto et Hikida, 2012

 トカゲ科(Scincidae)トカゲ亜科(Scincinae)トカゲ属(Plestiodon)に属するトカゲ。幼体は黒っぽい体色にうす茶色の縞が通り、尾は鮮やかな青色、全身に光沢がある。成長すると尾は青くなくなり、オスは胴体が一様に褐色になり、繁殖期には顎下が赤橙色になる。石の下や土中に巣穴を持ち、メスは産卵すると巣穴にこもって卵を守る。そのため、産卵は年に1回。その他のコメント
 下の写真の左はやや成長した幼体、中央はメスの成体、右はオスの成体。

 下の写真の左は東京都のヒガシニホントカゲ(オス)、中央は鹿児島県のニホントカゲ(メス)、右は神津島のオカダトカゲ(オス)。


ヘビ類(爬虫綱Reptilia・有鱗目Squamata・ヘビ亜目Ophidia

シマヘビ Elaphe quadrivirgata (Boie, 1826)

 ナミヘビ科(Colubridae)ナミヘビ亜科(Colubrinae)ナメラ属(Elaphe)に属するヘビ。茶色の地色にこげ茶色の4本の縞が前後に走っている模様が一般的であるが、全身が黒い色彩変異(黒化型)や縞模様が判然としないアオダイショウのような色彩などがある。北海道ではしま模様が判然としない個体が比較的多く見られ、アオダイショウと区別しにくい個体も見られる。眼の虹彩のまわりが濃橙色であることや胴中央部の体鱗列数(シマヘビはふつう19列、アオダイショウはふつう23列)を確認するとよい。全長1メートル程度の中型のヘビで、カエル類、トカゲ・ヘビ類、小型の鳥類、哺乳類と食性範囲が広い。
 分布は、北海道、本州、四国、九州とその周辺の島嶼の一部で、国後島にも分布する。下の写真の左は亜成体(しま模様が出かかっている)、中央は成体で黒化型、右は幼体(頭部に独特の斑紋がある)。


アオダイショウ Elaphe climacophora (Boie, 1826)

 ナミヘビ科(Colubridae)ナミヘビ亜科(Colubrinae)ナメラ属(Elaphe)に属するヘビ。体色は暗いオリーブ色で、うっすらと帯斑状模様が入る。幼体は帯斑模様が濃く、マムシと間違えられることがある。眼の虹彩のまわりは薄橙色。全長が1.5メートルを超えることはめずらしくなく、北海道を含む地域でもっとも大型のヘビ。分布はシマヘビとほぼ同様だが、シマヘビが分布しない対馬にも分布する。成体は主に鳥類と哺乳類を捕食するが、腹面の腹板を使って樹木を直登することや食道途中に卵を割るしくみがあり、鳥類の捕食に適応している。私は、子ウサギを捕食中のアオダイショウを見たことがある。
 下の写真の左は水田に入った成体、中央は畦にいるところ、右は成体の頭部。



ジムグリ Euprepiophis conspicillatus (Boie, 1826)

 ナミヘビ科(Colubridaeナミヘビ亜科(Colubrinaeジムグリ属(Euprepiophis)に属するヘビ。しま模様はなく、一様に褐色で小さい暗色斑がまばらにある。幼体は頭部にV字模様がある。1メートル程度の中型のヘビで、主に小哺乳類を捕食する。地中にいることが多く、夕方や曇天のときに見ることが多い。分布はシマヘビとほぼ同様。
 下の写真の左は成体、右は孵化直後の幼体(一腹から生まれたが色彩が異なる)。



シロマダラ Lycodon orientalis (Hilgendorf, 1880)

 ナミヘビ科(Colubridae)ナミヘビ亜科(Colubrinae)オオカミヘビ属(Lycodon)に属するヘビ。淡灰褐色と黒色のまだら模様で全長60cm程度の小型のヘビ。トカゲ類や小型のヘビといった爬虫類を主に捕食する。真っ暗になってから出現する夜行性で、南の地域ではヤモリ類の調査のときに見かけることがある。北海道、本州、四国、九州と周辺島嶼の一部に分布する。北海道では道南から道央の所々で確認されている。 その他のコメント
 下の写真の左と中央は関東地方の個体、右は北海道の個体(札幌市円山動物園のご協力による)。  



ニホンマムシ Gloydius blomhoffii (Boie, 1826)

 クサリヘビ科(Viperidae)マムシ亜科(Crotalinae)マムシ属(Gloydius)に属するヘビ。
 英語でもmamushiで通じる。体色は淡褐色で、暗褐色に縁取られた褐色の斑紋が並ぶ。幼体はやや赤褐色で、尾先が淡黄色。斑紋があればマムシと思っている人がいるが、アオダイショウの幼体なども斑紋があるので、眼のうしろの太い濃褐色の帯模様で判断したほうがよい。分布は北海道、本州、四国、九州と周辺島嶼の一部。天売島にも分布するが植林のときに入ったという説もある。夜行性で餌の探索などは主に夜間に行うが、日中にバスキングを行って体温を高める。胎生で、妊娠中のメスはバスキングによって子の発生を促進する。有毒であるが、毒は餌である小型哺乳類を致死させるためで、天敵への攻撃性はほとんどない その他のコメント
 下の写真の左は成体(眼のうしろの濃褐色の帯模様がよくわかる)、中央はバスキング中の妊娠メス(カメラを向けられて巣穴に入ろうとしている)、右は幼体(尾先が淡黄色)。

 下の写真の左はサハリンのカラフトクサリヘビ、中央はロシア・ウスリーのウスリーマムシ、右は対馬のツシママムシ。


カエル類(両棲綱Amphibia・無尾目Anura

ニホンアマガエル Dryophytes japonicus (Günther, 1859)

 アマガエル科(Hylidae)アマガエル亜科(Hylinae)アマガエル属(Dryophytes)に属するカエル。北海道、本州、四国、九州と周辺島嶼のほとんどに分布し、歯舞諸島、国後島やサハリン南端、ロシア極東地域、中国東北部、朝鮮半島、モンゴル東北部にも分布する。指先は吸盤状で草木の上に上がることができ、成体は樹上で生活するので、橋の上から樹木を見下ろす位置から高い葉の上にいるアマガエルを見るといったこともある。繁殖期は初夏から夏で、水田や水たまりに降りてきて産卵する。その他のコメント
 下の写真の左は日中バスキング中の個体、中央は夜間草むらで鳴くオス、右は地面にいたうす茶色が混じっている色彩の状態の個体。


エゾアカガエル
 Rana pirica Matsui, 1991

 アカガエル科(Ranidae)アカガエル亜科(Raninae)アカガエル属(Rana)に属するカエル。北海道とその周辺島嶼(利尻島、礼文島、奥尻島、歯舞諸島、国後島、択捉島)およびサハリンに分布する。繁殖期は春で、融雪が進んだ頃に池や湿地の止水域で産卵する。その他のコメント
 下の写真の左はエゾアカガエルのペア、中央は大陸極東に分布するディボウスキアカガエル、右は大陸側からサハリンまで分布するアムールアカガエル。



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