和名 サキシマカナヘビ                        日本のカナヘビ類にもどる

学名 Takydromus dorsalis Stejneger, 1904

英名 Sakishima grass lizard

漢字 先島金蛇

学名の意味 背面が特徴的な速く走るもの

分布 八重山諸島の石垣島、西表島、黒島、小浜島

形態と分類
 体長(頭胴長)の最大は72mm程度、尾長の最大は250 mm程度。他のカナヘビと似た体型だが、背面の鱗が細かく体軸方向の鱗列数が他のカナヘビ属の2倍程度で、一見するとコモチカナヘビのような粒状の鱗が並んでいるように見える。背側、腹側の鱗が角形であることは他のカナヘビ属の種類と同じ。新種記載でStejneger (1904) は背面の鱗が特徴的であるが、カナヘビ属の1種とした。その後、別属に分けられた時期があったが、分子系統学的な分析などによってカナヘビ属に含められるべきとなった。吻端近くから眼孔を通り過ぎて耳孔のあたりまで黒条が通っている。体色は背面と側面が緑色、腹面が黄緑色ないし淡緑色。カナヘビ属で重要な分類形質である鼠径孔は2対または3対、咽頭板は4対でニホンカナヘビと共通だが、体色や背面の鱗を含む多くの形質で異なる。

生態
 日本のカナヘビ類の中でもっとも草上、樹上性の高い行動習性をもつ。ときには高い木の枝を渡り歩くようなこともある。産卵は1回に1、2卵で年に複数回産卵するが、成熟年齢や年に何回産卵するかといったことはよくわかっていない。

生息状況の現状
 サキシマカナヘビは、灌木林と明るい草むらが混在している生息環境を好むが、生息地では農地開発などが進行し、適した生息環境が消失してきている。とくに西表島東部の湿地灌木林は面積が広かったのでその開発の影響は大きい。黒島や小浜島では外来種のインドクジャクの補食の影響が危惧されている。また、人の採取(とくに商業的売買)の影響が危惧されている。2020年から国内希少野生動植物種に指定されて法律で捕獲が禁止された。

参考文献

環境省編 2014. レッドデータブック2014. 日本の絶滅のおそれのある野生生物3 爬虫類・両生類.ぎょうせい.東京.153pp.

Stejneger, L. 1904. A new species of lizard from the Riu Kiu Archipelago, Japan. Smithsonian Quarterly, Miscellaneous Collections XLVII:294-295.

(2021.2.10)


サキシマカナヘビの背面はカナヘビ属としては小さめの鱗が並ぶ

追記 
 1970年代に西表島に訪れたときには、東部の大原から豊原に至る道も砂利道で、歩いていると道ばたでバスキング中のキシノウエトカゲがどさどさと逃げる音が続き、途中の製糖工場の裏の水田を越えると、その奥は広い湿地灌木林で、サキシマカナヘビやサキシマスベトカゲがあちらこちらに出現したものであった。今はその湿地は水田となり、その背景にあった丘陵地は畑になっている。道は舗装され、その周辺も圃場整備が進んでいる。当時は東部(豊原、大原、大富、古見といった地域)と西部(船浦、上原、浦内、白浜といった地域)の島内の往来は、干潮時に海沿いを歩くか山地を横断するしかなかったが、今は海岸沿いを舗装道路と橋で結ばれている。道路周辺は牧場や農地の開発が進み、行き止まりであった豊原の先も道路の延長と開発が進む。広大な山地はほぼ手つかずの自然が残っているが、その周辺の湿地や灌木林は様変わりしつつある。


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