和名 アムールカナヘビ 日本のカナヘビ類へもどる
学名 Takydromus amurensis Peters, 1881
英名 Amur grass lizard
漢字 黒龍江金蛇
学名の意味 アムール地方の速く走るもの
分布
日本の対馬の上対馬、ロシアの沿海地方とハバロフスク地区のシホテアリニ山脈南部周辺、中国の黒竜江省、吉林省、遼寧省の長白山脈および千山山脈周辺、北朝鮮、韓国の太白山脈周辺
形態
体長(頭胴長)は成体で60~75mm程度、尾長は160~180 mm程度。ニホンカナヘビと似た体型だが、よりずっしりしている。体色もニホンカナヘビと似ているが、唇部分の黒斑と胴部から尾部まで連続する背側部の楔形の帯模様が特徴。咽頭板は4対、鼠蹊孔は3~4対で、鼠蹊孔数は国外の記録は3対が多く、対馬では4対が多い。
生態
主に山地の斜面に生息し、石の堆積や樹木の根元の穴などにすぐに潜り込む。対馬は海岸近くから山がちな地形が連なることから、比較的標高が低い場所でも見られる。ニホンカナヘビやアオカナヘビと異なり、草上に登ることは、まずない。日なたに出てきて、バスキングを行い、採食後はすぐに地中にもぐるといった生活をしている。日本のカナヘビ類の他種は、湿った土の表面の草の根元や石の下などに産卵するが、アムールカナヘビは土を掘って産卵する。
日本における分布確認
対馬にアムールカナヘビが分布することは、1965年に柴田保彦氏が比田勝中学校に保存されていた本種の標本を見つけたことが発端となった。ラベルのない標本の中には、対馬に生息しないチョウセンスズガエルも混在していたため、標本の出所について柴田氏が慎重に聞き取りを行うとともに、実際に採集して対馬での生息が確認された。その後の調査で、鼠蹊孔数の変異の大陸産との違いなどが明らかになっていった。柴田氏の聞き取りの中には下対馬の厳原で見たといったものもあったが、現在までに本種の下対馬での生息は確認されていない。なお、朝鮮半島では平野にシロスジカナヘビ(Takydromus wolteri)が分布し、済州島にもシロスジカナヘビが分布する。対馬の南の壱岐にはニホンカナヘビが分布する。
参考文献
柴田保彦1966 対馬のアムールカナヘビ(予報).大阪市立自然史博物館研究報告19:13-17.
竹中践1987 対馬産アムールカナヘビとツシマスベトカゲについて.「対馬の自然」対馬自然資源調査報告書.長崎県.pp.161-173.
Zhao, E., K. Zhao, K. Zhou et al. 1999. Fauna Sinica, Reptilia 2, Squamata, Lacertilia. Academia Sinca, Science Press. (中国動物誌、爬行綱、第二巻、有鱗目、蜥蜴亜目)(中国語)
(2020.10.8)
背側部の帯模様(左)と唇部の黒斑(右)
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